令和6年6月7日~9日に開催されました日本プライマリ・ケア連合学会学術大会にてポスター発表(P-166)をしてまいりました。その内容を報告いたします。
アドヒアランス向上を目指し、新たな一包化処方薬管理ツール(お薬束)を用いた取り組み
一包化は飲み間違いを防ぐには有効だが、コンプライアンス向上には直結しないといわれている※1。患者の意思決定、選択の場を設ける事はアドヒアランス向上に有効とされる中、管理ツーの選択もアドヒアランス向上に好影響をもたらせないかと、日々の服薬指導の際に、試行錯誤した結果、今回の発表に至った。
背景
昨今、薬剤管理の簡素化や飲み間違い防止のために、薬局で処方薬の一包化が行われるケースが増えているが、一回分の服薬には簡便さはあるものの、調剤直後はかさばりやすく、置き場所に困るほか、残り少なくなると紛失しやすくなる、という声も聞かれる。(2023年1月~12月に当局で投薬した一包化の患者(家族)59名に聴き取り調査より)
既存の管理ツールの課題
そこで、既存の服薬管理ツールを紹介することにした。まず、薬カレンダーを紹介すると、「そんな歳ではない。」と、言う返答があったり、「吊っているところまで取りに行かないといけない。」とか、「セットするのが面倒くさい。ミスも怖い。」と、言う声があった。また、BOXを紹介すると、「場所をとる。」、「落としたら、バラバラになる」などの答えが返ってきた。
お薬束®(おやくそく)とは
当局で一包化薬を投薬している患者に意見を聞き、開発を重ね、2020年に販売した一包化処方薬を管理するツール。材質は、段ボール、コートボール紙、プラスティック製樹脂がある。
使い方は
- 薬包を切らずに丸める
- 薬包を本ツールに充填
- 使用時に引っぱって切る
お薬束®使用の好事例
- 常に大きさが一定で置き場所が固定された
- 設置個所が固定されると、服薬の習慣化しやすくなった
- 操作が簡単で、自助の範囲が広がった
好評な点は、小さくなっても大きさが変わらず、存在感がある。おきたいところに定位置におけるから、習慣化しやすい。操作も簡単で、いつも親のために食卓に一包ずつ置いていたが、引っ張って切るだけなので、私にもできると、自助の範囲が広がった。
新たな可能性
持ち運びが可能なので、新たな使い方ができた。それは、コロナ禍、在宅訪問に関して、感染症に敏感なられ、少しでも、家に上がってもらう介護関係者を少なくしたい要望がありました。そこで、お薬束®を使い、訪問の際、玄関まで持ってきてもらい、残薬確認と充填、体調チェックをさせてもらえたケースが出てきました。移動ができるメリットは、在宅だけに限らず、今後DX化や僻地医療、防災の観点で貢献余地があると思われます。
問いかけはエンパワーメント
「どんな風に薬を飲んでおられますか?」と、聞くと、よくぞ聞いてくれた!と、言わんばかりに「食事をして、お茶を飲むときに、座りながら棚に手を伸ばし薬を取り出して飲んでいる。」など、そのシチュエーションを事細かにお話しくださいます。これは、自身の行動を振り返り、納得するように話されます。まるで、自分自身と約束するように。次回の投薬時は、シチュエーションで飲んでいるかの確認で話が通じます。
※自身への約束が、のちに「お薬束®」の命名となりました。
結 語
服薬管理の提案は、薬袋のままや、従来のツールでの管理が困難であった患者に対し、一定の効果が見られた。
薬剤師のかかわり方にも変容があり、「薬を飲むところ、保管する環境」など患者の生活背景にも関心を持ち、より積極的なコミュニケーションを促せるきっかけになった。
課 題
医療・介護関係者間での管理ツールに対する共通認識は、服薬関係者への紹介レベルを一定化させる可能性がある。また、医療連携の観点からは、ツールを見れば、患者の状態を推測することができる、連携コミュニケーションの架け橋の役割にもできるのではないかと期待しています。
ツールの共通認識のために
皆さんのご意見・位置づけを教えてください
ツールの情報・知識レベルの共有と、連携の際にツールを通したコミニュケーションを図るため、皆様のご意見をお聞かせください。下記、QRコード、あるいは、アドレスからアンケートにお答えください。集められたご意見は、まとめて、改めてご報告させていただきます。よろしくお願い致します。
ツールのアンケートはコチラ☟
※1 2008(最終アクセス 2016. 6)40) 湯沢八江: 通院患者の服薬アセスメント指標の作成と有用性に関する研究。お茶の水医学雑誌50 : 133-143, 2002