背景と目的
―背景ー高齢化に伴い多剤併用が増え、飲み忘れ、飲み間違い防止のため、一包化調剤の需要が増えてきている。同様に、コンプライアンス向上のため服薬支援ツールの需要も増加傾向である。しかし、その種類は、薬カレンダーや薬BOXの二種が主流であるが、セッティングに時間がかかったり、充填ミスも生じる可能性もあり負担とリスクも生じる。
ー目的ー新たに開発されたお薬束®(おやくそく)は薬包を切らずに充填できるツールである。調剤業務の負担軽減や服薬指導への効果など、お薬束が服薬支援ツールとして 十分な機能を示すかどうかを検証した。
研究方法
期 間 : 2020/11/1〜2021/7/30対 象 者 :本研究参加文書で同意を得られた薬剤師アンケート内容:下図参照お薬束の組立作業、薬剤の充填、服薬指導への応用についての印象を評価。※対象者13名の内、12名は実際にお薬束を服薬指導に用いていないため、事前の印象評価を行った。
過去に使用歴のあるツール
お薬束®の組み立て時間
薬の充填業務の負担について
<減る理由>
・薬カレンダーでは一包ずつセットなので、非常に時間がかかる
*同様に1回・1日分ずつのセットをしなくてよい点 他4回答 ・誤りがないセッティング方法なので、再確認する時間が減った
・ロールを引き出すだけで薬が取り出せるのは便利、カレンダー設置するのは時間がかかる
・慣れるまで時間はかかるが、セットする形でお渡しすることで、スムーズにセッティングできると思う
<増える理由>
・箱にセッティングするのに時間がかかると思われる
・薬を箱内にセッティングする際に巻く方向や途中でちぎれてしまいそうでやりにくい
<変わらない理由>
・最後一包位になった時用に「おわり」を準備する必要がある
・服薬カレンダーよりも簡単と思うが、置き場所が卓上になってしまう
・巻くだけなので手間は変わらない
過去に経験したミスについて
<薬カレンダー>
・日付入りで日付の位置がずれていた
・分包紙(1回分)の幅が合わない(大きすぎた)
・切り離しているときに分包が破れてしまいました
・1日ごとに分けた薬の日付がずれてしまった
・曜日の入れ間違い
<薬BOX>
・ BOXに入らずくしゃくしゃになる
セッティングミスについて
調剤指導業務の評価
服薬指導業務への評価(事前の印象評価を含む)
<良い理由>
・日付を入れることで間違いが減る
・ある程度自覚のある方になら使えて有効かと思う
・一包化の薬を最後まで飲んだものを持参してくれるからコンプライアンスがわかりやすい
・患者さんが興味を持ってくれることで、コミニュケーションツールにもすることができた
・精神科受診中の方との薬の管理に役立った。患者さんの友達の分も欲しいと言われた
<悪い点>
・コンプライアンスは結局、本人が服用をするのを忘れたら一緒
・患者様の認知の状態によっては有効なこともあるが、飲みすぎてしまうなどのリスクも考えられる
・残薬の確認がしづらいのが難点
・薬のセッティングはやりにくく、飲み忘れがあったかどうか残薬がわかりにくい
・残薬が見えない点が改善されるとよい
お薬束®を勧めたい患者像
・ご自分で薬を管理できる方
・幼児のいない家庭(遊びで薬を引き出してしまわないように)
・調剤日数の多い患者さんやコンプライアンスの悪い患者さんに勧めたい
・忘れず飲みたいという患者 在宅支援を行っている患者
・足が悪くて自由に動得ない方など、テーブルに置いておくと便利で有効
・のみ方の多い方
・1日の服用回数の少ない患者様 設置場所の問題
・服薬の用法が少なく、ホッチキス止めの必要のない患者でかつ自分で管理できる人
・薬の収納に困っている患者さん
・子供で服薬を嫌がる方、精神科受診で過量服用の恐れがある方
・お薬管理が苦手な人、人にお薬をのんでるとあまり知られたくない人
・薬を服用することがネガティブな方、一人で管理することが苦手な方
・薬袋が汚れたり、約包が切れたりすることが多い患者さん
まとめ
お薬束®(おやくそく)は充填業務の負担とミスの軽減に対しては、特徴である「一包化を切らずに充填できる」点が評価されたと考えられる。また、服薬支援業務では、事前の印象評価ではあるが、コミュニケーションツールとしての評価が高いが、新しい使い方が、患者さんの興味を引き、話題性も含めコミュニケーションを高められると思われる。コンプライアンスや、アドヒアランスへの影響についても、向上する期待が示唆されたが、残薬の確認がしづらいとの指摘があり、今後の研究課題とも言える。
今後は、患者のコンプライアンス、アドヒアランスにお薬束®が実際にどう影響できるかも検証したい。
以上の結果、お薬束®が服薬支援ツールの新たな選択肢の一つとして機能できる可能性が示唆された。また、お薬束®の特徴である「充填後バラバラになりにくい」点は、災害時の移動や、オンライン診療時の薬の輸送にも期待が持てる。この点についても今後検証を行っていきたい。