災害に向けた薬の準備はされていますか?
近年、台風やゲリラ豪雨による水害や地震が多発しています。
一方、災害時にかかるストレスは甚大です。災害に直接かかわらなくても、体調を崩される方も少なくありません。持病のある方はさらに心配です。災害時でもしっかり定期薬を飲めるようにしなければならない。そんな大事なくすりをどのように備えたらいいのか?持って行けなかったらどうしよう・・。そんな不安に対して一緒に考えていきましょう。
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薬を「持ち出せる準備」と「持ち出せない時の備え」を
大きな目的は、災害時も必要なく薬を飲み、治療や予防が続けられるようにしないといけません。
薬の場合、備え方は大きく2つ
①薬を持ち出せるようにする
②薬が持ち出せない場合、避難所でもらえるようにしておく
どんな薬を備えるべきか
薬を持ち出すといっても、数や量には限りがあります。優先順位が必要です。まずは、ご自分が飲んでいる薬を整理してみましょう。
<発作時に使う薬>
心臓病や、呼吸器疾患など緊急を要する薬。「いつもそばに置いてください」と言われている薬は、とても重要です。例えば、屯用で使われる狭心症の薬ニトログリセリンなど舌下錠やスプレー剤。喘息発作時の吸入薬、低血糖時のブドウ糖など、まずは大切なくすりを、携行している以外に非常時としても用意しておく。
<定期薬>
「飲み忘れないでください。」と、言われている薬。高血圧・高コレステロール血症、糖尿病など生活習慣病の薬や、リウマチ薬、血栓予防(血をサラサラにする)薬など、継続が必要な薬はたくさんあります。繰り返しになりますが、ストレスのかかった状態では、定期薬の継続はなおさら重要です。
<避難場所で、困るような薬>
便秘になる、眠れない、痛くなるなど・・・。イメージは、「旅行の時不安で持って行く薬」です。
薬の備え方:3つのポイント
①予備としてもらっておく
薬を持ち出せれば、どこに行っても、同じ薬を飲めるので安心ですよね。日本医師会からも啓発されているのは「3-7日分を、予備として備える」ことを推奨されています。(日本医師会 健康ぷらざバックナンバー【2020年】)まずは医師と相談して、非常時の予備薬をもらい、非常用カバンに入れておきましょう。
<保管に注意>
ただし、保管の仕方は重要です。温度・光・湿気に注意しないといけません。ヒートの薬だと、長く持ちますが、一包化(いっぽうか:飲み方の同じ多くの薬を一つにまとめること)の薬は、期間が短いのが一般的です。最低限、チャック袋に乾燥剤も含めて保管してください。(処方期間から数か月)薬の保管方法や期間については、医師や薬剤師に相談してください。また、処方薬が変更されれば、予備の薬も変更する必要があります。処方変更時には、この点も注意してください。あくまでも定期薬の予備ですので、病状が安定していない場合は、医師との相談が必要です。
<どこに置くか?>
いざという時に持ち出しやすく、複数の場所に設置することがポイント。保管状態にも影響しますので、湿気や温度などにも注意が必要です。玄関・リビング・寝室・キッチンなど一か所より複数の場所に置くと持ち出しやすいでしょう。
ポイント!複数個所に置くと、持ち出せる確率が上がって安心。
②定期薬を持ち出せる工夫
日ごろから飲んでいる薬をそのまま持っていけたら、便利で安心ですよね。特に一包化の薬は多くの薬が入っているので、特定しにくく、投薬に時間がかかったり、一包化の形でもらえない場合もあります。すぐに持って出られるように準備と管理をしておく。避難所でも、いつも通り服用できることは一番安心ですよね。
【ポイント】
- 薬の置き場所を決めて習慣化する
- 届きやすい場所に置く
- まとめて管理するツールを活用する
【注意点】
- 服薬に支障をきたさないまとめ方
- 持ち運びやすいツールの選定
- 避難所でも使いやすいか?
③日頃から防災を兼ねた剤形の相談も
薬の形状を意味する剤形ですが、同じ成分でも様々です。ジェネリック薬品も先発の薬と比べ、飲みやすくしたり、保存方法を便利にした薬剤もあります。災害も踏まえて、医師や薬剤師に相談してみてください。
剤形の工夫も活用
災害時も想定して、口腔内崩壊錠(OD錠)は便利かもしれません。高齢の方など唾液量が少なく、薬が呑み込めない方でも飲み込みやすいように、口の中で溶けるように工夫された剤形です。水なしで飲めれば、災害時で、水がない時でも服用が可能です。非常時にも期待が持てます。
常温保存可能、期限の長い薬剤の代替・予備も検討(あくまで治療優先)
例)点眼剤などでは、防腐剤入りと無添加とあります。これにより、常温保存が可能な薬剤があります。(例:緑内障・高眼圧症治療薬ラタノプロスト点眼液0.005%「TYK」は先発品の添加剤を変更して,室温保存(1~30℃)を可能にした製剤(月刊薬事臨時増刊号2014Vol56)
また、開封後の期限は無添加で10日ほどですが、防腐剤入りで約1か月の薬剤に変えられることもあります。※医師の許可・指示が必要な薬もあります
同じ成分でも、剤形の工夫など様々です。医師・薬剤師にご相談ください。
薬を持ち出せない時の備え
薬手帳などを活用する
薬手帳があれば、医師や薬剤師に伝わりますから的確な薬をもらえます。日ごろから、薬手帳を持参し、いつものカバンに入れておくことをお勧めします。アプリの活用も便利です。いざというときのために、活用をご検討ください。 eお薬手帳(日本薬剤師会) しかし、管理が煩雑にならないよう注意。そのために、薬手帳以外の管理方法を下記にご紹介します。
ポイント!手帳がいっぱいになって新しい手帳になった時、捨てずに、非常カバンに入れておく。手帳に更新日やナンバリングすることもお勧めします。
薬手帳以外の活用
薬手帳以外に「おくすり情報」をもらっておく
「おくすり情報」略して、「ヤクジョウ」とも呼ばれています。もらっている薬を写真付きで薬手帳の情報より詳しい資料です。薬局で「ヤクジョウください。」と、言えば印刷してくれます。これを携行するか、非常カバンに入れておくと安心です。さらに!ヤクジョウを携帯で写真を撮っておきましょう、これは便利♪
薬だけでなく、情報の備えも、複数のバックアッププランをもつことをお勧めします。
服薬管理ツールを見直してみる
最近の避難グッズは、食品をはじめ普段使いできる日用品が増えてきています。服薬管理ツールも防災を兼ねた普段使いを意識してみましょう。持っていける量・重さ・持ち出しやすさは重要です。薬の入れ方では、移動時にバラバラにならないように気を付けてください。薬がバラバラになれば、いつどれだけ飲むかわからなくなり困りますよね。例えば、薬ケースで管理していて、ふたの閉まり具合などもチェックしてください。
避難所でも使いやすく
避難所のスペースは限られています。プライベートの確保も難しい中、他人の薬と混同してしまえば、大変です。氏名や飲み方などはっきり見えるように仕分けする。壁にかけることができるか?収納はできるか?足元に置いて蹴散らかすことがないか?日ごろから、災害時に使える薬管理方法も検討するのも一つです。
防災も兼ねた薬管理ツールの選び方
服薬管理ツールは、「まだまだ自分は大丈夫!」と、思われる方も多いですが、ツールをうまく活用して、習慣化することも継続には大切です。更に、同じ活用するなら、避難時にも活用できるものがいいですよね。そんな工夫をご紹介します。
【薬カレンダー】 管理ツールの定番ですが、通常のカレンダーなら、折り曲げたり、そのまま移動すれば、ポケットから薬が落ちてバラバラになります。チャック付きで移動用のカレンダーをお勧めします。
【薬BOX】 BOXに収まっていると、そのままつまんで出せて便利ですが、いざという時、バラバラになりかねません。蓋つきで、中が固定できるタイプもあります。壁のない避難所でも使えます。
【薬ケース】も同様です。蓋がしっかり閉まって、中がバラバラにならないものをお選びください。
【薬包収納型】 薬包を切らずに丸めて充填できる新しい服薬ツールもあります。使い方は引っぱって切るだけですので、移動時にバラバラになることなく、そのまま持ち運べます。壁のない避難所でも使えます。
それぞれの特徴を生かし、補いながら準備する
それぞれの備え方には便利な点もあれば、注意点もあります。いいところを活用し、不安なところを補いながら準備するといいですね。
長所 | 注意点 | |
---|---|---|
非常用として備える | 必要なものをまとめて持って行ける | ・薬の保管が重要 ・薬の期限管理が必要 ・処方変更時の変更も必要 |
薬手帳などを活用 | ・薬を持ち出せない時に対応できる ・正確な薬情報から、薬がもらえる ・アプリの活用も便利 | ・薬をもらえるまでに時間がかかる ・慣れた飲み方ができない可能性 例:一包化ができない、剤型やメーカーも変更になる可能性あり ・マイナンバーにも期待 |
定期薬を持ち出しやすくする | ・避難所でも、慣れた薬を慣れた飲み方で服用できる ・処方に時間がかかったり待つことが不要 | ・移動時にばらばらにならないよう注意 ・日ごろから固定(習慣)化した場所に置く ・避難先でも使いやすいか要検討 |
かかりつけ薬局を持ちましょう
薬手帳の必要性はご理解いただけたと思います。さらに、かかりつけ薬局を持たれることをお勧めします。一つに決めた薬局があれば、正確な情報をすべて網羅し、的確に情報提供してもらえるはずです。これを機に、ご検討ください。
おわりに
-災害時でも、薬を続けられること-
持ち出しができる準備、持っていけない時の準備、日ごろからの工夫についてお話ししました。
大事なことは、必要な薬をどんな時でも続けられること。災害時でも続けられるか?今一度、毎日飲まれている薬の備え方を見直してみてください。
「ちゃんと飲んで、ちゃんと診てもらう」
いざという時も大事な定期薬の服用を継続していただきたいと願うばかりです。思いは、「ちゃんと飲んで、ちゃんと診てもらう」この積み重ねが、健康寿命の延長と信じ、服薬継続啓発をさせていただいております。
飲むためにできること、弊害を少なくするお手伝いができれば、と思います。
文責:薬剤師 川村典康
セルフチェックシートの無料ダウロードについて
災害時の薬の薬の備えについて、ご紹介しましたが、まとめとしてセルフチェックシートを作成しました。災害医療に携われました 西口 工司教授(京都薬科大学 医療薬科学系臨床薬学分野)に、冊子を含めご監修いただきました。ぜひ、薬を備えるきっかけにしていただければ、と思います。また、自治体をはじめとする危機対策・福祉関係の方々にも、個別避難計画等の参考にしていただければ幸いです。
こちらから、ダウンロードできます
各冊子の無償提供について
お役立ち小冊子 無料 | お薬束 (raku-uru.jp)
【各自治体なども薬の備えについて啓発されています】